1650万円超の落札実績も。ウイスキー界のロールスロイス・マッカランとは?

    2023.04.19

    ワインのように優美で、香しいアロマを放ち「ウイスキー界のロールスロイス」と称されるシングルモルトが、マッカランです。ボトルによっては、その価格までもがロールスロイス並の場合もあります。

    実際、これまでに記録したウイスキーの高額取引ランキング上位の多くはマッカランが占めており、2019年10月サザビーズで行われたオークションにて、ウイスキーとしての史上最高額となる「190万ドル(2億6.350万円)」を記録したボトルも1926年のマッカランでした。

    今回は、高級車や不動産にも匹敵するほどの価値を持つシングルモルト、マッカランの魅力に迫ります。
    (TOP画像引用:サントリー)

    マッカランとは

    マッカランはスコッチウイスキーの故郷・スコットランドの中でも、約半数の蒸留所が集中するエリア、スペイサイドで造られているシングルモルトウイスキーです。

    その華やかで気品がある雰囲気、濃厚な味わいから「ウイスキーの王道」と呼ばれ、ウイスキーを楽しみ始めた初心者の方から、数々のシングルモルトウイスキーを飲み比べているウイスキーマニアまで、多くのファンに愛されています。

    使用される原酒の樽の種類や熟成年数などによって多彩なラインナップを誇り、レアなシリーズや終売となったシリーズについてはかなり高額な値段で取引されているのも注目です。

    マッカランの魅力

    マッカランの魅力は、その濃厚でありつつもシルクのような滑らかさを持つ口当たりと、シェリー樽熟成由来の甘く芳醇な香りにあります。

    この魅力を生み出す秘密は主に3つ。「ポットスチル(蒸留釜)」「ファイネストカット(選別方法)」「熟成樽」へのこだわりです。

    (1)スペイサイドで最も小さい銅製のポットスチルを使用

    マッカランではスペイサイドで最も小型の銅製のポットスチルを使用しています。
    小型のポットスチルを使用すると一度に蒸留できる分量が少ないため手間がかかり、また多くのポットスチルを設置しなくてはいけないためコストもかかります。

    しかし、その分密度が高く上質なニューメイクスピリッツ(蒸留したての原酒)を得ることができるのです。

    (2)「ベスト・オブ・ベスト」の部分しか使用しない

    最小レベルのポットスチルを使用することで、非常に上質なニューメイクスピリッツが生成されるわけですが、マッカランではそれをそのまま用いることはしません。熟練のテイスター達による選別がおこなわれ、ごく一部、ベスト・オブ・ベストの部分しか使用されないのです。

    この最高の中の最高のニューメイクスピリッツを選別することを「ファイネストカット」といいます。その量は蒸留されたニューメイクスピリッツ全体のわずか16%! 選びぬかれたニューメイクスピリッツだけしかマッカランになることを許されないのです。

    (3)­ 熟成に用いるシェリー樽はすべて自社製を使用

    マッカランに独特で芳醇な風味をもたらすシェリー樽は、すべて自社で製造したものを用いています。

    味にバリエーションを出すこと、またリスクヘッジの意味もあって、ヨーロッパ原産とアメリカ原産の2種類のオーク材を使用。それらを伐採・乾燥させて樽を作ったあと、スペインのシェリー酒の名産地ヘレス地方に送られ、ドライ・オロロソシェリー酒の樽として3年間使用されます。

    オークの伐採から実際にマッカランの熟成樽として使用されるまでには、実に6年もの歳月が費やされているのです。

    マッカランの長い歴史

    マッカランの歴史は古く、現在蒸留所があるエリアが「マッカラン教区」と呼ばれていた18世紀初めに、すでに“マッカラン農場のいのちの水”として有名になっていました。そして、1824年にはハイランド地区で2番目に蒸留ライセンスを取得し、政府公認の登録蒸留所になります。

    その後、2度の世界大戦時には生産量が30%も減少し、マッカランとしてのクオリティが揺らいだ時期もありましたが、当時マッカランを率いていたケンプ・トラスト財団のリーダー、アレクサンダー・ハービンソン博士の決して妥協を許さない姿勢によって品質を維持。

    現在はエドリントン社やウィリアム・グラント&サンズ社のほか、サントリーも25%の株式を所有しています。

    マッカランを入手する方法

    ジャパニーズウイスキーを含めたシングルモルトが世界的に高騰していることもあり、その頂点に立つともいえるマッカランの価格も上昇中です。

    特に18年以上の長期熟成ボトルは投資対象としても注目され、プレミア価格がつき入手困難な状態です。
    ここでは、価値が高まるマッカランを希望小売価格に近い形で入手する方法をご紹介いたします。

    サントリー公式サイト

    サントリーはマッカランの株式を25%所有する大株主であり、日本での正規輸入元です。サントリーの公式サイトでは、マッカランの定価販売が抽選で実施される場合があります。

    ただし、抽選販売の実施タイミングは不定期のため、日々の情報収集が不可欠といえます。

    AmazonなどのECサイト

    12年、18年といった比較的熟成期間の短いボトルに関しては、AmazonなどのECサイトを通じて、希望小売価格よりも安く入手できる場合があります。

    プレミア価格が付けられている場合、Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングといった複数のECサイトを比較することで、現在の相場を把握することも可能です。

    ただし、25年や30年といった長期熟成ボトルやMデキャンタのようなレアシリーズについては、ほとんどがプレミア価格でしか入手できません。

    百貨店

    各百貨店では自社のカード会員限定で、マッカランをはじめとするプレミアムウイスキーを先着、または抽選販売する場合があります。

    特にお中元やお歳暮の時期、また父の日あたりには目玉商品として長期熟成ボトルなど貴重なボトルが販売されることもあるため、予めカード会員となり、常に情報をチェックしておくことが大切です。

    オークションハウス

    終売となってしまったシリーズや、日本には正規輸入されていないボトルについてはシンワオークションなどの国内のオークションハウスのほか、サザビーズなどの海外オークションサイトで入手できることがあります。

    マッカランのオークション価格

    マッカラン30年

    引用元: Sotheby's

    マッカラン30年は、厳選されたスパニッシュオーク樽で「最低30年間」長期熟成させた原酒のみをヴァッティング(ブレンド)させた、至高のウイスキーと呼ぶにふさわしい一本です。シェリー樽に由来するブラウンは、長い年月を経て濃い琥珀色に変わり、フルーツのコンポートのような濃密で甘い香りを放ちます。

    また、熟成とともに角が取れたその味わいはどこまでもスムーズで滑らか。もちろん口にすれば最高の体験をもたらしてくれますが、非常にレアなボトルのため投資の対象としても有力です。2023年2月のシンワオークションでは、95万5,300円で落札された実績があります。

    マッカラン52年 セレクトリザーブ

    引用元: Sotheby’s

    マッカラン52年 セレクトリザーブは、第二次世界大戦直後の1946年に蒸留され、その後52年の長きにわたって熟成された、超希少な幻のウイスキーです。

    当時は戦争直後ということもあってあらゆる資源が乏しく、石炭が使用できないためにピート(泥炭)を使っていました。そのため、現在のマッカランとは異なるピート特有のスモーキーな香りを持っています。

    マッカラン52年も、2023年2月のシンワオークションにて、314万5,500円で落札されました。

    マッカランTales of The Macallan Vol.Ⅰ

    引用元: Sotheby’s

    マッカランTales of The Macallan Vol.Ⅰは、マッカランが生まれたイースター・エルキースの領主であり、マッカランの伝説の創始者である「ジョン・グラント大佐」に敬意を評して設えられた一本です。

    1950年に蒸留され、71年もの長きにわたって熟成された原酒を2021年にボトリング。

    フランスのクリスタルメーカー、ラリック社製のクリスタルデキャンタに封じ込められたその宝物とも呼ぶべき琥珀色の液体は、マッカランの歴史を綴った800ページにも及ぶ分厚い年鑑をくり抜き、その中に収められています。まさに、マッカランのすべてを知ることができる、究極のボトルといえるでしょう。

    非常に貴重なボトルには高い価値がつき、2022年7月のサザビーズではなんと約1,650万円で落札されました。

    価値が高騰するウイスキー「マッカラン」おすすめシリーズ4選

    長い歴史を持つマッカランには、数多くのシリーズが存在します。その中から熟成年数が長かったり、すでに終売となったりと、レア度が高く、今後価値の高騰が期待されるシリーズを4つご紹介します。

    ザ・マッカラン シェリーオークシリーズ

    シェリーオークシリーズは、マッカランの中ではベーシック、レギュラーといえるシリーズです。

    自社製のシェリー樽で最低12年熟成させたモルト同士をヴァッティングさせており、その熟成年数によって12年、18年、25年、30年などがあります。

    マッカランらしいシェリー樽由来の赤みかかった褐色は、熟成年数によって徐々に濃くなり、甘さを感じられる味わいやバニラの芳香に加え、ドライフルーツやシナモンスパイスのような風味が増していきます。

    ザ・マッカラン マスターデキャンタシリーズ

    引用元: サントリー

    マスターデキャンタシリーズは、マッカランの中でも選びぬかれた原酒をクリスタルデキャンタボトルに詰めた限定シリーズです。「Mデキャンタ」「Mブラック」「オスクーロ」「リフレクション」など、さまざまなバリエーションがあります。

    中でも「Mデキャンタ」「Mブラック」などの「M」は、英語のMastery(マスタリー、匠の意)から名付けられており、マッカランの中でも最高峰の位置づけです。

    用いられる原酒ももちろんプレミアムで、1940年代に蒸留されたとされる73年熟成された超長期熟成モルトなどが使われています。

    ザ・マッカラン ファインオークシリーズ

    現在は「トリプルカスクマチュアード」として販売されており、ファインオークシリーズとしては終売となりました。

    バリエーションが多く、8年、10年、12年、15年、17年、18年、21年、25年、30年などがリリースされましたが、終売のために入手困難でプレミア価格がついている状況です。

    ファインオークシリーズは、ヨーロピアンオークのシェリー樽・アメリカンオークのシェリー樽・バーボン樽の3種類の樽で熟成させたモルトをヴァッティング(ブレンド)させており、シェリー樽由来のバニラ香やスパイス香に加え、バーボン樽由来のトースト香やカラメル香が楽しめます。

    ザ・マッカラン エディションシリーズ

    エディションシリーズは、ボトル1本1本のトレーサビリティ(原材料などの調達や生産方法、消費までの過程を追跡可能にすること)を明確にした画期的なシリーズです。

    例えば、2015年にリリースされたエディションNo.1(リリース順にNo.1からNo.6までがリリースされている)では、8種類の樽で熟成されたモルトを使用しており、1番目の樽は「1st fill Tevasa Butts EU」(ファーストフィルシェリー樽はヨーロピアンオークで、スペインのヘレスにあるシェリー原酒醸造所テバサ社が提供)といったように、8種類すべての樽がどこのシェリー醸造所で使用されていた樽か分かるようになっています。

    これほどまでに全ての情報を開示するのは、マッカランが自社製品に並々ならぬ自信を持っていることの証といえるでしょう。

    エディションシリーズもNo.6を最後に終売となっているため、価格が上昇傾向にあります。

    まとめ

    マッカランはその香り、味わいがほかのシングルモルトと一線を画すほど素晴らしいことはもちろん、レギュラーシリーズ、限定シリーズ、免税店向けシリーズなど、多彩なラインナップを誇るため、コレクションアイテムとして楽しむこともできます。

    また、終売となってしまったレアボトルなどはもちろんのこと、シェリーオーク12年といったレギュラーシリーズでさえも値上がり傾向にあることから、投資の対象としても有望な銘柄です。

    興味のある方は気に入ったものを数本、お手元に置いておいてはいかがでしょうか。
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