世界3大オークション・サザビーズを解説! 入札への参加方法も紹介
世界には、アートをはじめとした多種多様な品を取り扱うオークションハウスが数多くあります。その中で、長きにわたる歴史を持つ3つのオークションハウスが「サザビーズ」「クリスティーズ」「フィリップス」です。
その内、今回はサザビーズをご紹介します。サザビーズの歴史や特長、取り扱う品物やエピソードのほか、入札に参加する方法も網羅した内容ですので、今後オークションに参加したいと考えている方も、ぜひご覧ください。
(TOP画像引用:Sotheby’s)
サザビーズの歴史
1744年に創業したサザビーズは、まさに伝統あるオークションハウスです。長い歴史の中でも、2022年の総売上高は約80億ドル(約1兆800億円)と過去最高を記録し、現在も成長し続けています。
この売上高は、同じく世界を代表するオークションハウス・クリスティーズが同年にマークした84億ドル(約1兆1,121億円)の総売上高に次ぐ数字です。
まずは、名実ともに“世界3大オークションハウス”の一つと言える、サザビーズの歴史についてご紹介します。
世界最古の国際オークションハウス
サザビーズの創業者は、イギリス・ロンドンの実業家であるサミュエル・ベイカー。彼は出版も手掛けており、当初は書籍をメインに扱うオークションハウスとしてサザビーズを立ち上げました。
初めてのオークションでは、ジョン・スタンレー卿の蔵書数百冊を出品。貴族が持つ膨大な蔵書を競売にかけ、中には“皇帝”と呼ばれたナポレオン・ボナパルトが流刑地・セントヘレナに持ち出した書籍や杖もラインナップされていました。
アートオークションに本腰を入れる
1778年のベイカー他界後は、現在冠されている名の由来となった甥のジョン・サザビーが跡を継ぎます。
サザビーは書籍のほか、版画・古美術品・骨董品・コインなどに領域を拡大。その後は様々な経営者が歴任し、1917年に高級ブランド店が並ぶロンドン・メイフェアのニュー・ボンド・ストリートに本拠地を移した頃には、クリスティーズと肩を並べるオークションハウスとなりました。
絵画などの美術品に力を入れたサザビーズは、1950年代半ばに印象派とモダンアートの部門を設立し、いよいよアートオークションに本腰を入れていきます。
世界最大級の美術品オークション会社へ
1955年には、イギリスのオークションハウスとして初めてアメリカにオフィスを開設。現在まで主流となる「イブニングセール」の導入や、1960年代には衛星通信を利用して世界各地からの同時入札を可能にするなど、革新的な試みにチャレンジしていきます。
1970年代には、現代美術の旗手として活躍していたアンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグら、存命中のアーティストの作品を出品。
売上を伸ばしながら、香港にも新たにオークションハウスを展開するなど、経営規模を拡大したサザビーズは、1988年にニューヨーク証券取引所に上場を果たします。
その後、2019年にはフランス人アートコレクターのパトリック・ドライが約4,000億円でサザビーズを買収。現在は、世界40カ国80拠点を構える世界最大級のオークションハウスとして、さらなる成長を見せています。
アジアにおけるサザビーズオークション
香港にオークションハウスを展開するサザビーズ。2022年の売上高のうち、アジアでの売上は11億ドル(約1,500億円)で、入札額の比率は入札総額の30%となり、共に前年と同程度の数字をマークしています。
特筆すべきは、新規入札者の68%がアジア地域であること。その内、3人に1人が新規入札者となるなど、アジアからの注目が高まっています。
そんな流れを受け、サザビーズは2023年に東京と上海にギャラリーのオープンを計画。続く2024年には、香港のセントラル地区に新拠点を設立する予定です。約2,200平方メートルの新たなギャラリースペースでオークションや展覧会を開催する見込みとなっており、さらなる地盤固めを進めています。
日本にも拠点を展開
1979年に東京オフィスを開設したサザビーズは、2019年に日本国内初となる店舗を帝国ホテルにオープン。ロンドン・ニューヨーク・香港といった世界各地で開催されるオークションへの出品、および入札のサポートを受けられます。
▼サザビーズ 東京オフィス
サザビーズオークションで取り扱う品物
現在、サザビーズオークションでは75分野の品物を取引しています。
絵画・彫刻・陶磁器・写真などのアートをはじめ、家具・酒類・宝飾品・バッグ・時計・切手・自動車・楽器・玩具・書籍など、取り扱っているアイテムは実に多種多様です。
サザビーズが大きく成長した理由
アート投資など、実物投資への興味・関心の高まりを追い風に売り上げを伸ばしているサザビーズ。
創業以来最高額となった2022年の総売上高80億ドル(約1兆800億円)は、過去最高額を記録した2021年の73億ドルからさらに10%弱増加しています。
この好調な数字は、不安材料を抱える世界経済においてアート市場の安定を裏付けていると言えそうです。
なお、2022年の総売上高のうち64億ドル(約8,700億円)は、ファインアート・宝飾品・ワインをはじめとしたラグジュアリーアイテムによるもので、前年の60億ドルからさらに数字を伸ばしています。
年間売上高を伸ばしたもう1つの理由として見逃せないのは、新進アーティスト市場の盛り上がりです。アート市場で人気を集めるアーティストの過去20年間の作品に特化したイブニングセール『The Now』を2021年11月にスタートして以来、過去3回の開催で2億4,440万ドルを売り上げました。
サザビーズを代表する3大エピソード
バンクシー/シュレッダー事件
2018年10月にサザビーズオークションに出品された「Girl with Balloon(赤い風船に手を伸ばす少女)」が100万ポンド(約1億5,000万円)で落札された直後、額縁に仕掛けられたシュレッダーによって裁断。
バンクシーはSNSでシュレッダーを仕込む動画を公開し、この作品は裁断後に「愛はごみ箱の中に(Love is in the Bin)」と改題されました。
オークション会場で制作された史上初の作品として世界中で話題を集め、バンクシー作品全体の価格は一気に高騰。同作は2021年に再びサザビーズのオークションに出品され、裁断前の約18倍となる約28.9億円で落札されています。
ダミアン・ハースト/アーティスト自身が作品を出品
イギリスを代表する現代アーティストの一人、ダミアン・ハーストは2008年に行われた「Beautiful Inside My Head Forever」と称した2日間のオークションに、牛をホルマリン漬けにした作品など約200点の作品を自ら出品。合計落札価格は211億円(1.1億ポンド)ほど。
「アートをオークションに出品する場合、制作したアーティストはオークションに介入しない」と慣例を破る形で開催されたこのオークションでは、事前に開催された展示会に2万人を超える来場者が集まるなど、大きな注目を浴びました。
バスキア/前澤友作氏が約123億円で落札
2017年、当時株式会社ZOZOの代表取締役だった実業家の前澤友作氏が、サザビーズ・ニューヨークで開催されたオークションでバスキアの絵画『Untitled』を1億1,000万ドル(約123億円)で落札。
日本でも大きな話題となり、前澤社長はもちろん元来から多くのファンを持つバスキアに再び脚光が集まりました。
サザビーズオークションの入札に参加する流れ
一般人も参加OK
長い歴史を持ち、格式高いイメージが先行するサザビーズオークション。オークションハウスの受付および電話やインターネットから登録を申請し、身元や口座の照会などの事前審査に問題が無ければ、基本的には誰でも参加可能です。
開催3~5日前にはプレビューで作品を鑑賞可能
オークションの開催3~5日前には鑑賞会(プレビュー)が開催され、出品予定の作品を事前に鑑賞可能。落札を検討する際の品定めはもちろん、普段なかなか見る機会のないコレクター商品や価値あるアートを間近に見る良い機会です。
オークションでの入札方法は4通り
▼オークション会場で直接入札
事前申込を済ませておけば、オークション会場にて入札可能です。オークションでよくイメージされる、札(パドル)を手に持って競売に参加します。
▼事前入札
事前にカタログなどを見て商品を選び、オークションの開催前に入札します。
▼電話入札
オークション会場にいる代理人に電話で指示を出し、入札します。
▼オンライン入札
インターネットでライブ中継されているオークションに参加し、オンラインで入札します。
落札時の手数料
品物を落札した際には、他のオークションハウスと同様に手数料がかかります。
<例>ロンドンやニューヨークで開催されたサザビーズオークションの落札手数料
■落札価格40万ドルまで:落札価格の25%
■落札価格40万1ドルから400万ドルまで:落札価格の20%
■落札価格400万1ドル以上:落札価格の13.9%
なお、手数料はオークションの開催場所によって異なります。
付加価値税の支払い
落札後は、落札価格+手数料に加えて付加価値税を支払う必要があります。
税額はオークション開催国により異なるため、落札時には手数料や税金が上乗せされることを考慮しておきましょう。
まとめ
今回は“世界2大オークションハウス”のうち、サザビーズを紹介しました。世界を代表するオークションハウスには魅力ある作品が多数出品されます。アート投資を考えている方は、まずは参加を検討してみてはいかがでしょうか。