海外オークションにて1000万円以上の落札実績多数。評価が高まるウェグナー作品を解説

    2023.04.19

    ハンス・J・ウェグナーは、デンマークデザイン界はもちろん、世界中にその名を刻んだ著名な家具デザイナーです。この記事では、多彩なチェアを作り出してきたウェグナーの半生や、魅力ある作品たちをご紹介します。
    (TOP画像引用:CARL HANSEN & SON)

    ウェグナーとは

    ハンス・J・ウェグナーは、デンマークデザイン界にその名を刻んだデザイナーです。

    ウェグナーは「チェア」に特化したデザイナーであり、その90年余りの人生において、500以上のチェアを手掛けました。彼が作り出すチェアは、高い芸術性を誇りながらも使いやすいという、画期的なデザインを採用していました。

    多くの人々から高い評価を受けるチェアを生み出し続けたウェグナーは、デンマークのデザイン界において黄金期を彩った巨匠のひとりと称えられています。

    ウェグナーの半生

    デンマーク人のウェグナーは、1914年にドイツの国境の町・トゥナーに生まれました。靴職人を父に持つウェグナーは家具職人を志し、家具職人 H.F スタルベアーグの元で家具を学び、17歳で家具職人の資格を取得。その3年後に同国のコペンハーゲンに拠点を移し、1936年から1938年まで工芸スクールで学んだ後、デザイナーとしての活動を本格的に開始しました。

    彼は、無二の親友である家具デザイナーのボーエ・モーエンセンや、建築家や時計デザイナーとしても知られるアルネ・ヤコブセン、デンマークのデザイン界において非常に大きな影響をもたらしたヨハネス・ハンセン社などと手を組み、さまざまな家具や建築物をデザインしていきます。

    ウェグナーは若くしてその名が売れた建築家で、30代前半でデザイン事務所を開設。その後も、ウェグナーの活躍と名声はとどまることを知らず、デンマーク王立芸術大学からは名誉学士号も送られました。

    ウェグナーの代表作品

    Yチェア

    引用元: CARL HANSEN & SON

    ウェグナーは数多くの革新的なチェアを生み出しましたが、そのなかでも「Yチェア」は特筆するべき作品といえるでしょう。

    デンマーク商人が中国のイスに座った姿を描いた肖像画からインスピレーションを受けたといわれるYチェアは、背もたれとアームを一つにする革新的なデザインを採用し、実に100以上の工程を経て作られるYチェアは、モダニズム家具の名作として名高く、今もなお賞賛を受け続けている作品です。

    The Chair(ザ・チェア)

    「ザ・チェア」もウェグナーの名を世に知らしめた代表的な作品です。「The」は続く言葉を強調する意味を持つ単語であり、「The Chair」は「チェアの王様」「チェアのなかのチェア」を表すために名付けられたと考えられています。「The Chair」の名を冠することが許されているチェアは、ウェグナーの作品だけです。

    ちなみにこの作品は、かのアメリカ第35代大統領J.F.ケネディがテレビ討論会に出演した際に使われたチェアとしても知られています。

    ベア・チェア

    家具におけるモダニズムは、直線的なデザインを基調としています。しかし、デニッシュモダンの旗手として知られたウェグナーは、「ベア・チェア」にて柔らかな丸みと曲線、優雅なラインを持ったデザインを取り入れました。

    「ママ・ベア」の愛称でも知られるベア・チェアは人間工学に基づいた構造を採用しており、座る人が最大限に快適であることを意識して作られました。愛らしさを感じるデザイン、そして包み込まれるような心地よさを共存したベア・チェアは、稀有な作品と言えます。

    ウェグナーの作品を入手する方法

    ウェグナーの作品は、家具店やECサイトで販売されています。また、ヴィンテージ作品もオークションでしばしば出品されています。

    高い評価を受けるウェグナーの作品は、現行品・ヴィンテージ品を問わず高値で取引されています。中には、オークションにて1000万円以上の価格で落札された作品もあるほどです。そのため、信頼できる業者・出品者かどうかを見定める必要があるでしょう。

    ウェグナー作品のオークションにおける価値

    ウェグナーの家具は、サザビーズなどの海外オークションに出品され、高値で取引されています。ここでは、オークションでの取引実績があるウェグナー家具の特徴についていくつか解説します。

    Tub Chair(タブチェア)

    引用元: Sotheby’s

    1954年に生産されたTub Chairは、ウェグナーのパートナーであったヨハネス・ハンセン社が製造を担当。しかし、著しく制作難易度が高いことから、少数生産にとどまった逸品です。

    サザビーズオークションでは、2016年6月にヴィンテージが出品。8万7500米ドル(約939万円)で落札されました。

    Model No. JH522(Chair)

    引用元: Sotheby’s

    ウェグナーがデザインした家具の作品集にも収録された作品で、Tub Chair同様にヨハネス・ハンセン社との共同制作によって製作されました。

    先に紹介した、The Chairの系譜を継ぐ作品にして集大成とも言える作品で、家具職人展では非常に高い評価を得た作品でもあります。

    こうした背景を持つ作品は、2016年7月に出品されたサザビーズで高評価を受け、こちらも8万7500米ドル(約939万円)の高値で落札されました。

    Model No. JH521(Easy Chair)

    引用元: Sotheby’s

    1953年にメーカーズギルド展で発表され、プロトタイプとして数脚が開発されたこのモデルは、愛らしいころんとした丸いフォルムと、布と革という異素材の組み合わせで作られているという特徴を持っています。

    その姿かたちの美しさ、そして希少性から、高い人気を誇るモデルであり、2016年7月のサザビーズでは色違いの2脚がオークションに出品され、いずれも非常に高値(10万米ドル ※約1073万円/8万2500米ドル ※約872万円)で取引された実績があります 。

    高い評価を集めるウェグナー家具を紹介

    PP502

    ウェグナーは木の特性を活かした作品を数多く製作しました。しかし、「PP502」は背骨の部分に木を、座面にはクッションを、そして脚にはスチールが使われています。

    ウェグナーの家具のすばらしさは、異なる素材を組み合わせても、それぞれの素材の魅力を引き立たせる優れたデザインにあるといえるでしょう。販売価格は、高い場合で約256万円程度です。

    PP550

    ウェグナー作品で、特に華やかで優美さを感じさせる作品が、「PP550」です。まるで、クジャクがその羽を広げたように美しいラインは、見る人の目を一瞬で惹きつけます。

    リビングの主役となりえる存在感を持つPP502も、ウェグナーの作品らしく「使いやすさ」にも配慮されています。座り心地のよさはもちろんのこと、ひじ掛けにはあえてダークトーンの木材を使用し、汚れが目立たないように工夫されています。販売価格は160万円程度です。

    PP250 Valet Chair

    このチェアを見た人は、まずはユニークなデザインに思わず頬が緩むのではないでしょうか。遊び心が詰め込まれたこのチェアは、「眠るときの衣服を、どのようにすれば効率的に整頓できるか?」を考えて作られた作品です。

    そのため、ハンガーのように見える背もたれがデザインされており、座面を開けると小さな収納スペースがあります。愛らしくも楽しく、機能性もあるこの作品は約178万円で販売されています。

    まとめ

    ウェグナーが手掛けたチェアは非常に多岐にわたり、彼がこの世を去った後もその美しいデザインと機能性が評価され、オークションやECサイトでは高値で取引されています。高い価値を持つ家具を購入したいと考えている方は、ウェグナーの作品をチェックしてみてはいかがでしょうか。
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