チェアが約900万円で落札。ポール・ケアホルム作品の代表作や価値を解説
素晴らしい家具職人は長い歴史のなかに、家具だけではなくその名前をも残します。今回は「ポール・ケアホルム」を取り上げ、その半生や代表作品について解説します。
(TOP画像引用:FRITZ HANSEN)
ポール・ケアホルムとは
「スチールの家具職人」として知られているポール・ケアホルムは、その人生をスチール素材の探求と研究に注いだ人物です。
家具において重要な素材とされる木と同様の価値を持つスチールの美しさに魅了されたポール・ケアホルムは、生涯にわたりスチールの可能性と芸術性を追求し続けました。彼の作り出す家具は非常に高く評価され、1957年には「ミラノ・トリエンナーレ」でグランプリを獲得するに至ります。
ケアホルムはわずか51歳でこの世を去ることになりますが、彼が作り出したシャープで現代的なデザインは今もなお、多くの人を魅了し続けています。
ポール・ケアホルムの半生
ケアホルムは、デンマークで生を受けた家具職人です。彼は若くして家具を学び、やがてデンマーク美術工芸学校に進学。そこで高い評価を得ます。
彼の技術は卓越したものでした。その証が「PK25」です。PK25はケアホルムが学生時代に作り上げた最後の作品であり、彼を象徴する作品です。
ポール・ケアホルムの代表作品
PK22
ケアホルムは、まだ20代の頃に、イタリアの美術展覧会“ミラノ・トリエンナーレ”でグランプリを受賞します。そのときの受賞作品が「PK22」でした。
PK22はケアホルムの出世作ともされる逸品で、象徴的な作品であるとも評されています。装飾性の少ない非常に簡潔なデザインは、ケアホルムらしさにあふれた作品です。
芸術性の高さはもちろん、生産性にまで思いをはせて作られたPK22は、現在でも製造され続けている名品です。
PK61
ケアホルムの作品を一言で表すのであれば、「ミニマリズム」という言葉がもっとも適当でしょう。“Less Is More(少ないほうが豊かである)”の言葉を体現するかのように、ケアホルムの作品はいつも非常にシンプルです。
大理石とスチールを組み合わせたコーヒーテーブルのPK61は、スチールの脚部が非対称の位置にしつらえられた特徴的なデザイン。
PK61を製作する前のケアホルムは工業デザイナーとして高い評判を受けていましたが、この作品により彼は家具デザイナーとしての確かな評価を得たとされています。
PK25
先ほども少し触れましたが、PK25はケアホルムが学生時代に作り上げた作品です。スチールと帆船用のロープで構成されたチェアは無駄がなく、しかしどの角度から見ても隙がなく、ラウンジを飾るひとつの芸術品としての美しさを併せ持っていました。
ケアホルムはその後も多くのチェアを生み出し続けますが、20代前半に生み出したこのチェアは、70年以上の時を経てなお生産され続けています。
ポール・ケアホルムの作品を販売している店舗
ケアホルムは現代でも非常に人気の高いデザイナーであり、彼が設計した作品はリプロダクト品として、ECサイトを含め多くの店舗で売られています。
一方で、その高い人気からヴィンテージ品はオークションにて高値で取引されています。
ポール・ケアホルム家具のオークションにおける価値は?
高い知名度を持つケアホルム作品のうち、当時作られた作品のいくつかは、彼の子孫に受け継がれてました。
しかし、ケアホルムの直系の子孫により、ごく限られた店にだけ「幻の三部作」などのヴィンテージ作品が譲られることがあり、彼の作品を愛する多くの人の耳目を集めています。
今後も、彼の作品はオークションを通じて高値で取引されることでしょう。それはケアホルムが作り出した家具の持つ不変的な美しさを表していると言えます。
PK26
PK26は、非常にユニークな構造です。一見するとソファに見えるのですが、実は「脚」がありません。PK26は。ウォールマウントタイプ(金具などを用いて、壁に家具を取り付けるタイプ)のソファであるためです。
ユニークな構造を持つPK26は、一見「壁に取り付けるだけでは、加重に耐えられないのではないか?」と、心配に思われるかもしれません。しかし、ケアホルムはスチールという素材の特性を熟知しており「スチールならば圧力に強いこと」を十分に理解していたのです。
PK26の評価は非常に高く、サザビーズでは約325万円で落札された実績があります。
PK51
今から66年前に作られた「PK51」は、「ポール・ケアホルムの美意識を伝えてくる作品」とも評され、高い評価を得ています。
ケアホルムらしいスチールと天然木を組み合わせて作られた印象的なワークテーブルは、「PK11」チェアとともにリリースされました。後年はもう少し小さなサイズのPK55も作られています。
サザビーズに出品された際には注目を集め、約339万円にて落札されました。
PK24
使われている素材の一つひとつが、お互いを引き立て合っているからこそ作り上げられる「簡素な」曲線を持つ「PK24」チェアは、ケアホルム作品において特に個性的な作品のひとつです。
シンプルなデザインが多いケアホルムの作品のなかで、彼はPK24に豪華さと華麗さ、そしてどこか官能的なロココ様式のデザインを採用しました。この時代に生み出されていたシェーズロング(背もたれが非常に長いイス)をモチーフに、オリジナリティにあふれた自らのチェアを作り出したのです。
ケアホルムの尽きせぬ探求心から生み出されたこのチェアは非常に高い評価を受け、サザビーズでは約909万円で落札されました。
高い評価を集めるポール・ケアホルムの家具
ここでは、より高い評価を集めているケアホルムの作品を、カテゴリーなどの詳細も含め3点ご紹介します。
PK31
日本を代表するクリエイティブ・ディレクターの一人、佐藤可土和(さとうかしわ)氏は、フランスを代表するデザイナー「ル・コルビュジエ」などの家具を愛し、ポール・ケアホルムが作り出した「PK31」「PK80」や、ケアホルム一族が復刻させた限定品を手にしています。
ソファ「PK31」は、ケアホルムらしいシンプルなデザインを持ちながら、レザーとスチールを使用した堂々たるフォルムは、時にラグジュアリーさも感じさせます。リビングの主役にふさわしい一品といえるPK55は、664万4.000円の高値で販売されています。
PK80
デイベッドとしても使える「PK80」は、「ポール・ケアホルムの才能をそのまま写し取った作品である」と評価されています。
PK80は、ケアホルムの1つ前の世代の建築家として活躍した、ルートヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエらが作り出したカウチに影響を受け、ケアホルムが練り上げて作り出したとされています。
現在は、ニューヨーク近代美術館をはじめとした世界各国の有名な建物で採用されており、現在の価格は300万円です。
PK20
ケアホルムの作り出す家具は、いずれも時代を超えて私たちを魅了し続けています。なかでも「PK20」は。世に出て数十年が経っているにも関わらず、常に『モダン』であり続ける家具の象徴といえるでしょう。
ラウンジチェアとしても愛用されるPK20は、柔らかな曲線が優美な雰囲気を作り出し、ギャラリーに飾られるほどの芸術品として評価されています。現在販売されているPK20の価格は169万4,200円です。
まとめ
スチール素材の探求に長い時間を費したポール・ケアホルムの生きざまは、彼の作り出した家具にそのまま反映されています。若くしてこの世を去ったケアホルムですが、作り出した数々の作品が持つ魅力は、今もなお高い評価を集め、燦然と光り輝いています。