森山大道の代表作品や落札価格を紹介|1枚300万円で落札された写真作品も
日本を代表する写真家の一人、森山大道。モノクロで表現されたスナップ写真をはじめ、センセーショナルな作品は現代の若者にも支持されています。また、世界から高い評価を集める彼の作品はアートオークションにおいても確かな評価を得ており、中には高額取引されている作品もあります。
今回は森山大道の経歴や作風、多岐にわたる活動やオークションでの実績も交えて広くご紹介します。
(TOP画像引用:South China Morning Post)
森山大道の経歴
1967年に日本写真批評家協会新人賞を受賞
1938年に大阪府で生まれた森山大道は、幼少期から少年期にかけて島根県邇摩郡で育ちます。少年期から既に旺盛な表現力を携えていた彼は、やがてフリーのグラフィックデザイナーを経て、写真家の道を歩みました。
岩宮武二と細江英公に師事して撮影の腕を高めた後、森山大道は1964年にフリーカメラマンとして独立。カメラ毎日で発表した『にっぽん劇場』シリーズが評価され、1967年に日本写真批評家協会新人賞を受賞しました。
1968年には、同シリーズを収録した写真集『にっぽん劇場写真帖』を発表。この頃には、同人誌『プロヴォーク』第2号より参加するなど、精力的に活動を展開します。
多くのメディアから依頼を受けた森山は著名人の撮影にも携わるなど、知名度が向上。東京写真専門学校(現・専門学校東京ビジュアルアーツ)の専任講師を務めるなど、後進の育成にも積極的に取り組みながら、日本を代表する写真家としてのポジションを確立していきます。
世界各国で展覧会を開催
国内外で評価を集めた森山大道は各国で個展を開催。
2008年に東京都写真美術館で開催された「森山大道展 Ⅰ.レトロスペクティヴ1965-2005/Ⅱ.ハワイ」、2011年に国立国際美術館で開催された「オン・ザ・ロード 森山大道写真展」、2012年~2013年にかけてロンドン・デートモダンで開催された合同展「William Klein + Daido Moriyama」など、さまざまな展覧会が開かれました。
現在は、島根県立美術館にて2023年4月12日(水)~6月26日(月)の会期で「森山大道 光の記憶」が開催中です。
森山大道の作風
“アレ・ブレ・ボケ”
森山大道作品の特徴として“アレ・ブレ・ボケ”があります。一般的に、写真は鮮明かつクリアなものが求められますが、彼の作品ではあえてフィルムの粒子を際立たせていることが特徴です。
そのうえ、手ぶれやピントのボケを意図的に起こすことで、写真としてのリアリティを高めています。写真作品として、大きなインパクトが伝わる作風と言えるでしょう。
“スナップショット”
森山大道は「街頭スナップ写真家」と自称しています。彼の作品はモノクロでコントラストが強いものが多く、そこに粗くぼやけて、ピントの合っていない通称“アレ・ブレ・ボケ”が加わることで、躍動感のあるダイナミックな写真が完成します。
写真集や雑誌のページに街頭スナップを掲載する写真には、インパクトが求められます。その点は森山大道自身が意識しており、モノクロで荒々しいタッチの写真に取り組む理由の一つになっています。
森山大道の使用カメラ
森山大道は写真家でありながら、カメラにこだわりを持たないことで知られています。実際に「撮りたかったら、どんなカメラでもいいから目の前にあるカメラで撮る」と語るほどです。
リコーGRシリーズを愛用
そんな森山大道は「リコーGRシリーズ」を愛用しています。
「小型、軽量であることが絶対条件であるストリートスナップ用のカメラとして、とても使いやすい」と語るように、スナップショットを撮影するカメラマンならではの視点や感覚を持っていると言えるでしょう。
森山大道の代表作品
にっぽん劇場写真帖
1968年発刊の写真集です。「写真史を塗り替えた作品」とも評されており、“アレ・ブレ・ボケ”が世に広まるきっかけを作った作品です。
「写真は鮮明に撮影するもの」と考える写真家から批判を受ける一方で、多くの若者から支持を得ました。
三沢の犬
極端な陰影が強烈な印象を与える、1971年発刊の写真集『狩人』に収録された一枚です。海外では『Stray dog』と呼ばれ、森山大道の代表作品となっています。
アサヒカメラの連載で全国を旅しながら撮影した際、宿の外で偶然この犬に出くわしたのだとか。その姿は、“獲物”を探して旅する森山自身を表しているとも評されています。
写真よさようなら
1972年に発刊された写真集です。“アレ・ブレ・ボケ”写真の極致と言われ、抽象的な写真がランダムに掲載されています。
一般的な商業写真とは真逆の方向性で撮影された写真の数々は、森山大道という写真家を全面に表していると言えます。
SAINT LAURENT SELF 01: DAIDO MORIYAMA
2018年、イブ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターを務めるアンソニー・ヴァカレロが手掛けるアート・プロジェクト『SELF』に森山を起用。
“東京の夜”をテーマにした写真たちは、新宿・歌舞伎町で男女のモデルを撮り下ろした写真と、森山がこれまで東京の街を撮影した写真が集められたもの。
森山大道は、2002年に写真集『新宿』、2020年に『TOKYO』をリリースするなど、東京、なかでも新宿エリアを好んで撮影しています。パリで行われた展示により、彼の代名詞と言えるモチーフが世界に広く発信されました。
森山大道の活動
数々のアーティスト写真を撮影
森山大道は、これまで数々の著名アーティストを撮影してきました。例えば、宇多田ヒカル、木村拓哉、福山雅治などの作品がよく知られています。
最近では、森山大道のドキュメンタリー映画でオープニングナレーションを担当した菅田将暉の写真が公開されました。いずれも“森山らしさ”を存分に感じる印象的な写真です。
渋谷駅でエキシビジョンを開催
2019年8月に、渋谷駅のヒカリエ改札内地下を中心に開かれた『SHIBUYA / 森山大道 / NEXT GEN』では、4名のクリエイターと共に参加。
展示場所は63カ所にものぼり、森山大道初となる屋外展示も開催されました。
ユニクロとのコラボ
名作『三沢の犬』をはじめ、自身の手を撮影した作品「手」など、森山大道のインパクト十分の写真をプリントしたコラボTシャツがユニクロから2021年に発売されました。
静謐な雰囲気でありながら、迫力を感じさせる森山大道らしさが感じられるアイテムに仕上がっています。
映画「過去はいつも新しく、未来はいつも懐かしい」
2021年には、森山大道を追ったドキュメンタリー映画「過去はいつも新しく、未来はいつも懐かしい」が公開。
日本を代表する写真家の一人である森山の生き様を描いた本作は、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツでも上映され、高い評価を得ています。
森山大道作品の価格
2015年『三沢の犬』
森山の代表作『三沢の犬』は、ロンドンの老舗オークションハウス・フィリップスにて約300万円の値で落札。
写真一枚が持つ落札価格としては非常に高値で、今後も価値が高まることが予想されます。
2016年『Smash-up from アクシデント』
2016年5月には、高さ19 cm×幅 28.4 cmの小作品『Smash-up from アクシデント』が300万円超の高値で落札されました。
国内オークションでの落札実績
森山大道の作品はSBIオークションなど、国内のアートオークションでも多数の落札実績があります。エスティメート(予想価格)を上回る価格で落札された作品もあり、確かな人気を感じさせます。
2018年11月『犬の町』
2020年2月『Untitled』
2020年8月『Untitled』
2022年7月『犬の町』
まとめ
今回は、日本を代表する写真家・森山大道の半生や活動、作風や価値などをご紹介しました。現在80代を迎えた森山大道の作品は唯一無二のインパクトを持ち、市場での価値を高め続けています。
アート投資を検討されている方は、ぜひ彼の作品をチェックしてみてはいかがでしょうか。