コレクターインタビュー:「コレクション投資」を通じてアートとビジネスマーケットの目利き力を養う(二口 晃さん)

    2023.01.26

    広告やデジタルマーケティングのプロとして活躍されてきた二口 晃(ふたくち あきら)さんのアートコレクション暦は数十年に及びます。90年代、2000年代、2010年代とアートマーケットの変遷を体験しながら購入スタイルも変化させ、ご自身のコレクションから作品を販売するようにもなられた二口さん。そんな彼に「アート投資」の魅力やアドバイスを伺いました。

    ー1990年代からアートのコレクションをはじめられたという二口さんですが、2020年にご自身の会社を立ち上げられたそうですね。まずは、お仕事内容を中心に自己紹介していただけますか?
    二口:国内・外資の広告代理店や、外資系のデジタルメディア会社、化粧品会社及びタバコの会社などで、広告をはじめとしたマーケティング領域を専門として仕事をしてきました。2年前にデジタルメディアを活用したマーケティングを専門とするコネクテッドメディアという会社を立ち上げました。
    ー具体的にはどのようなサービスを提供されているのですか?
    二口:街中でよく見かける屋外広告の効果を可視化して販売するというビジネスです。現在進行中の大型企画の一例をあげますと、渋谷のスクランブル交差点をはじめ全国にある屋外の大型ビジョンを、ある大手企業から請け負って放映しています。私は、その広告が流れている視認エリアの人の動きをリアルタイムでモニタリングすると共に、認知や好意度、購入意向に結びついているかを分析しています。
    ーいまのオフィスもメゾネットタイプのおしゃれな造りで、現代アートを中心とした色々な作品を飾られていてステキです。アートコレクションをはじめたきっかけを教えていただけますか?
    二口:学生の頃から写真が好きで、タカイシイギャラリーなど、写真に特化したギャラリーをよく巡っていました。新卒でも買える1~2万円ほどの価格帯でポラロイドや写真作品を購入した事がコレクションの始まりと言えると思います。また、NADiffというアート作品も取扱う本屋さんでは買いやすい値段の新人作品を販売していたので、90年代後半からそういったものも購入しはじめました。2000年代からは、数万円くらいの若手アーティストの版画なども少しずつ買いはじめました。
    ーオークションに行かれるようになったきっかけは?
    二口:たまたま誘われて行ったオークションで、マシュー・バーニーという著名アーティストのポスター(サイン入り・額装込み)が3〜5万円程度で出ていたので買うことができました。オークションでもお手頃で良い作品があることに気づいて行くようになったのですが、当時は70〜80年代のウォーホルの版画も今ほど高くなく、入手することができました。
    ーどのようなオークションに行ってらっしゃるのですか?
    二口:最初は日本初のコンテンポラリーアート専門オークションと言われた、東急Bunkamuraのザ・ミュージアムで行われたオーガーオークションに行きました。他には銀座のオークション(Tha Market)や、移転前の東陽町にあったマレットにも足を運びました。その後、2012年にSBIオークションが立ち上がりましたが、現代アートに特化しているところが私の趣味にぴったり合っていたので、それ以来SBIオークションには毎回参加しています。

    また、オークションに行くようになってから、自分のコレクションの中にも販売できるような作品があることに気がつきました。2000年代後半からさらに作品が増えてくると、だんだん置き場所がなくなってきたので、以前買った作品を少し売って、新しく欲しい作品を購入するということもしていました。

    今まで、自宅や実家の居住スペースを最大限活用して購入した作品をなんとか収納していたのですが、それでも限界が来たので、倉庫に預けるようになりました。

    2013年に開催されたアンドレアス・グルスキー展で手に入れたポスター

    ー倉庫に預けるようになったのはいつからですか?
    二口:2020年に創設されたbetween the artsの「美術倉庫」という保管サービスが始まってからです。これは大きな転機になりました。

    倉庫に預けるようになって、置き場所を気にしなくて済むようになったからです。それからまたコレクションがどんどん増えていきました。
    ー現在コレクションは何点ですか?
    二口:1030点です。
    ー個人コレクションとしては驚くべき点数ですね! コレクションから販売されたり、作品をかけ替えたりするのに、どのようにして作品を管理されているのですか?
    二口:同じくbetween the artsが運営する資産管理サービス「COLLET(コレット)」を大いに活用しています。「美術倉庫」では、作品を預けると同時に写真を撮影してデータベースにアップしてくれるので、全作品を把握するのにとても便利です。何気なく見ていて、昔買った作品が結構値段が上がっていることに気がついたり、今度知人のお祝いなどでプレゼントするのにちょうど良い作品を見つけたり、重宝しています。
    ーコレクションをはじめて、ご自身にどのような変化があったと感じられますか?
    二口:友人にアートの購入をすすめることが多くなりました(笑)。勧め方は、友人たちの価値観に応じて変えていますが、財テクとして、資産のポートフォリオの何パーセントかをアート作品にすると良いという勧め方をすると興味を持つ方が多いように感じます。
    ーそれは、二口さんのコレクターとしての楽しみ方と「コレクション投資」の成功事例が魅力的だからだと思うのですが、「コレクション投資」について詳しく伺いたいと思います。まず、ご自身がお持ちの作品を売る時のプロセスはどのようなものなのでしょうか?
    二口:私がコレクションを売りはじめたのは2016年からです。90年代に買った作品が値上がりしていることに気がついたのと、現代アートのマーケットの盛り上がりも感じたからです。私は、好きな作品を長く持って楽しみたいという嗜好なので、昔買ったものでそろそろ売っても良いかなと思ったものを委託で販売するという方法をとっています。

    セカンダリーマーケットでも人気の高いタカノ綾と愛☆まどんな

    田名網敬一のレンティキュラ作品

    ーセカンダリー(いったん購入顧客の手元にあった作品を二次販売すること)の販売はどこが受けてくれるのですか?
    二口:タグボートというアート専門のEC会社に、「いくらで売る」という売値を決めて委託販売をお願いしています。売りたい作品の見積もりを出してもらい、納得した金額で出品します。短いサイクルでたくさん販売して利益を上げたいわけではないので、このような手法が私には合っています。十数年かけて買い集めた作品が何年もかかって少しずつ利益が出るという長期サイクルですが、おかげで平均して4割の利益率となっています。
    ー4割とは、株式などの財テクと比べても割りが良いですね。他にも注目している販売ルートはありますか?
    二口:前出の「COLLET」も良さそうです。まだ始まったばかりですが、倉庫に預けると同時に、公開を希望する作品は他のコレクターからも見える形で掲載されます。

    すると、特に販売しようと思っていなかった作品に対して、「売っていただけますか」といったオファーが入ったりするので新鮮です。意図的に販売したい作品を選んで委託するタグボートの方法とは違った気づきがあります。オファーが入った時点で、「この価格なら売ります」という風に交渉して、納得したら販売するというプロセスを取れます。

    そういうわけで、オークションにはあまり出品しないのですが、草間彌生や奈良美智のような人気作家の作品で、明らかに入手した時よりも高値で売れそうな大型作品があれば、オークションに出すという手もあるかもしれません。

    写真家・石塚元太良の大型作品

    ー自分に合ったスタイルを見極めることが重要ですね。あらためて「コレクション投資」の楽しさはどこにあると思われますか?
    二口:やはり、値上がりするものを買う楽しさはあると思います。10年前に購入した作品が値上がりすると、売らないにしても自分が目利きとして評価されたような気がして嬉しくなります。私はマーケティングが専門なので、アートを見極めることとビジネスでマーケットを見極めることに共通する部分も感じています。

    例えば、アートの価値も、どのギャラリーに扱われているかとか、誰が買ったかとか、どことコラボレーションしているかといった要素に左右されます。
    ー今後、コレクション投資をはじめてみたいと考えている方々へのアドバイスはありますか?
    二口:時間と手間暇がかかるのでやはり好きであることが重要です。私は1,000点以上のコレクションがありますが、どれも好きで鑑賞するのが楽しいですし、所有している事自体で満足できるものを購入したので、究極1点も売れなくても満足感は変わりません。

    例えば、これが株式投資であれば、塩漬けにした株など持っていても豊かな気分になりませんが、一方で居住スペースを圧迫する事も有りません。アートをはじめとした現物投資は興味が無いものですと、所有自体が負担になる可能性があると思いますのでご自分の気持ちや環境も考慮されると良いと思います。
    ー情報収集はどのようにされていますか?
    二口:例えば、オークション会場とかギャラリーのレセプションで会ったコレクターやギャラリスト、そして何よりアーティストさんとコミュニケーションをとるというのはおすすめです。そうは言っても、最近コロナでそのような機会が減っていますし、地方に住んでいるとか、シャイな性格であるとかで、なかなか難しい場合があります。

    そのような時は、オンラインでのコミュニケーションもおすすめです。自分と好みが似ていそうなコレクターとインスタグラムなどを通じて繋がるのです。

    そのためのプラットフォームとして、やはり「COLLET」は良いと思っています。「COLLET」に登録しているのは、コレクターさんですし、コレクションしている作品の画像も見ることができるので、自分と趣味が似ていそうな方を探すことができます。今後はメッセージ機能も追加されると願ったりかなったりですね。
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