幻のウイスキー「軽井沢」とは? 1,400万円を超えた価格や希少性を解説
2015年、香港のオークション会場が大きな喧騒に包まれました。ある一本のウイスキーが、なんと約1,400万円という当時のジャパニーズ・ウイスキー最高額で落札されたからです。
そのウイスキーの名は「軽井沢1960 52年」。世界中のオークションで価格が高騰している日本のウイスキーというとサントリーの「山崎」やニッカの「竹鶴」が有名ですが、それらに比べるとあまり世の中に知れ渡っていないこの「軽井沢」に、なぜ注目が集まったのでしょうか。それは、軽井沢がもう現在では造られていない「幻」のウイスキーだからです。
ウイスキー投資の対象としても非常に有望な「軽井沢」。その魅力と市場相場などについて詳しくお伝えします。
(TOP画像引用:PRTIMES「Whisky Auctioneer Ltd」)
ウイスキー「軽井沢」とは?
ウイスキー「軽井沢」は、長野県の軽井沢蒸留所で製造されていたわが国初のピュアモルトウイスキーです。
軽井沢蒸留所は1955年、大黒葡萄酒(後にオーシャン→合併してメルシャン)によって設立。ウイスキー「軽井沢」はそれから約20年後の1976年に、当時としては破格の1万5,000円という価格で発売されました。サントリーのシングルモルトウイスキー「山崎12年」が発売されたのが1984年ですから、その8年も前にデビューしていたことになります。
国産ウイスキーとしてはこれまでにない高価格帯のウイスキーだったため売れ行きを心配する声もありましたが、その品質はすぐにウイスキー愛好家たちの舌をとらえ、1ヶ月で予定の1,000本を完売。国産ピュアモルトウイスキーのパイオニアとして人気を得、その後も軽井沢12年、15年、17年など様々なボトルがリリースされます。
しかし、2000年に軽井沢蒸留所での蒸留が停止され、ウイスキーが新たに製造されることはなくなりました。
その後はカスク(樽)内のモルトを瓶詰めして販売していましたが、2012年に軽井沢蒸留所が完全閉鎖され、オフィシャルボトルの販売は終了。
2013年にはイギリスのナンバーワン・ドリンクスカンパニーという会社が軽井沢蒸留所に残っていた樽を買い取り瓶詰めして販売し始めましたが、その本数はごくごくわずかです。
冒頭でご紹介した「軽井沢1960 52年」はもっとも古い樽から瓶詰めされたもので、総瓶詰め本数はたったの41本、販売価格は「200万円」でした。
まさに「世界でもっとも手に入りにくい」幻のウイスキーとなってしまったのです。
2022年に「新」軽井沢が製造開始
入手困難な状況が続く中、ウイスキー軽井沢の美味しさ、素晴らしさを継承していこうというプロジェクトが立ち上がります。
長野県佐久市で370年続く戸塚酒造が、軽井沢ウイスキー株式会社を設立。軽井沢蒸留所で50年に渡りウイスキーの製造に携わってきた最後のモルトマスター内堀修省氏を顧問に、軽井沢蒸留所最後のウイスキー・ディスティラー(造り手)中里美行氏を工場長に迎え、「新」軽井沢ウイスキーを製造することになりました。
ウイスキー軽井沢のDNAを色濃く受け継ぐこのウイスキーがどのようなものになるか、大いに期待が高まります。
軽井沢の魅力
ウイスキー軽井沢は、ウイスキーの本場スコットランドから輸入されたゴールデン・プロミスという種類の麦芽と浅間山系の伏流水を仕込みに用い、比較的小型のポットスチル(蒸留器)で丁寧に蒸留されます。
そして蔦に覆われた貯蔵庫内に配されたシェリー樽でゆっくりと熟成させるのですが、この蔦が貯蔵庫内の温度と湿度を一定に保ち、ウイスキーの熟成に理想的な環境を整えてくれるのです。
年間を通して冷涼で安定した軽井沢の気候はスコットランドに近く、これらのこだわりの製法と理想的な環境がウイスキー軽井沢を比類なき逸品に育てあげます。
その味わいは独特なピート(泥炭)香を放ちつつもまろやかで、なめらかな口当たり。口に含んで舌の上で転がせば、すーっと喉の奥に吸い込まれていきます。
この味わいを堪能するには、ストレートか、ウイスキーと同量の常温の水で割るトワイスアップという飲み方が良いでしょう。
軽井沢の買取相場
新たに製造されることがなく、幻のウイスキーとなった軽井沢の価格は、世界的なジャパニーズ・ウイスキーのブームもあって、高騰を続けています。
ここでは、最近でもっとも多くの軽井沢が出品、落札された2017年のWhisky Auctioneerが主催したオンラインオークションの結果をお伝えします。
主な銘柄のオンラインオークション落札結果
※為替レートは2017年当時のもの(£=ポンド)
・軽井沢1960シングルカスク:£100,100(約1401万4,000円)
・軽井沢1963シングルカスク50年熟成:£24,700(約345万8,000円)
・軽井沢Honor Sumo Collection/1981/1982/1983:£17,100(約239万4,000円)
・軽井沢1964シングルカスク48年熟成:£17,100(約239万4,000円)
・軽井沢45年熟成シングルカスク:£12,700(約177万8,000円)
・軽井沢1995シングルカスク18年熟成(22本限定販売品):£10,300(約144万2,000円)
・軽井沢1981シングルカスク(45本限定販売品サクラカスク使用):£9,700(約135万8,000円)
・軽井沢1970シングルカスク/Geisha Label:£8,100(約113万4,000円)
プレミア価格がつきやすい軽井沢の特徴
軽井沢に限りませんが、プレミア価格がつきやすいウイスキーには特徴的な傾向があります。
製造本数が限られている
需要と供給の関係から、供給が少ない=製造本数が限られている場合はプレミア価格がつきやすいといえます。
例えば上で紹介した軽井沢1995シングルカスク18年熟成は、熟成年数はそれほど長くありませんが、「22本限定販売品」という点でプレミア価格がつくわけです。
また製造年数の古いもの、熟成年数の長いものなども、もちろん味わい深くなるなどの理由もありますが、やはり希少価値から価格が高騰するといえます。
ボトル形状やラベルが通常とは異なる
ボトルの形状やラベルが通常のポトルとは異なるものも、希少価値からプレミア価格がつきやすくなります。
上記の例でいえば、ラベルに芸者をあしらった軽井沢1970シングルカスク/Geisha Labelが代表例です。
コレクションとして楽しめるセット物
軽井沢Honor Sumo Collection/1981/1982/1983は1年ずつ異なるモルトを用い、異なる相撲の様子を描いたラベルを貼った3本セットです。
このようなセット物はコレクションとして楽しむことができるため人気が高く、プレミア価格がつきやすくなります。
投資向け軽井沢のおすすめ銘柄7選
軽井沢 シングルモルト 17年
軽井沢シングルモルト17年はISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)で金賞、IWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション)ワールドワイドウイスキー部門で銀賞を受賞したウイスキーです。
熟成感と生き生きとした香りの双方を楽しむことができます。
軽井沢 シングルモルト 21年
軽井沢シングルモルト21年は、1965年に蒸留されたモルト原酒を21年の長きに渡ってシェリー樽の中で熟成され、まるでワインのようなナッツやレーズン、バニラを彷彿させる甘い香りを放ちます。
また多くのボトルのバリエーションがあり、「岩田久利ガラスボトル」などは価格相場が80万円程度にもなります。
軽井沢 ピュアモルト 12年長期貯蔵原酒使用31年〜12年
軽井沢 ピュアモルト 12年長期貯蔵原酒使用31年〜12年は12年以上熟成のモルトを中心に、最長31年熟成までのモルトをブレンドした贅沢な1本です。
2001年IWSCワールドワイドウイスキー部門 金賞受賞。超長期熟成のモルトを加えているため、黒蜜系の甘い香りを楽しむことができます。
軽井沢 マスターズブレンド 10年
オレゴンパインを使用した木桶で発酵させ、シェリー樽で10年以上熟成させたモルトを熟練のブレンドマイスターがブレンドしたウイスキーです。
2002年IWSCワールドワイドウイスキー部門 金賞を受賞しています。
軽井沢 能30年
箱やボトルに日本の伝統芸能「能」の役者や装束、面などをデザインした軽井沢 能シリーズ。
日本を象徴する「能」をモチーフとしているために海外市場で非常に人気が高く、また30年以外の25年や28年などはそれぞれラベルのデザインが異なるため、その点でもコレクターが注目しています。
軽井沢 FIVE DECADES1960-2000
「軽井沢 FIVE DECADES1960-2000」は1960年代、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代の各年代のモルトをブレンドした非常に希少性の高い1本です。
レーザー刻印されたボトルはスペシャル感があり、コレクターの心を惹きつけます。
軽井沢 Golden Geisha
軽井沢 Golden Geishaは左右2本のボトルをセットで揃えられるようになっていて、左右のボトルを合わせると1枚の芸者さんの絵になるという趣向になっています。
向かって右側が軽井沢33年シェリーカスクGolden Geishaで限定129本、向かって左側が軽井沢31年シェリーカスクGolden Geishaで限定225本とそもそもの生産本数が極めて少なく、また右側が129本しかないため、セットで揃ったものは非常な希少価値があります。
まとめ
ジャパニーズ・ウイスキーは世界中から注目を集めており、各地でおこなわれるオークションでも軒並み高価格を維持しています。
中でも今回ご紹介した軽井沢は、蒸留所が閉鎖され生産が止まっていることもあって幻のウイスキー、コレクター垂涎の1本となっているのです。
今後もさらなる値上がりが予想されるウイスキー軽井沢。ポートフォリオの一部に加えてみることを検討されてみてはいかがでしょうか。