奈良美智|経歴・作品・グッズなどを紹介

    2023.01.27

    奈良美智(ならよしとも、1959年~)は、日本の画家・彫刻家で、世界的に評価されている現代アーティストです。主に、ドローイングや木の彫刻、FRP(繊維強化プラスチック)素材を使用した立体作品が多いですが、近年では陶器の立体作品にも取り組んでいます。

    大きな目でこちらをじっと見つめる少女の絵など、彼の作品をどこかで目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。

    作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ロサンゼルス現代美術館、青森県立美術館、東京都現代美術館ほか国内外の多くの美術館に作品が収蔵されています。

    2019年のオークションでは、奈良の作品「Knife Behind Back」が2,490万ドル(約27億円)で落札され、当時の日本人アーティストとしてはオークションにおける過去最高額を記録など現在最も注目を集めているアーティストの一人です。この記事では奈良美智の経歴や代表作について解説していきます。

    奈良美智の経歴

    まずは奈良美智の人物像を知るために、ポイントとなる出来事を時系列で追ってみましょう。それから代表的な作品や、高額で取引されている現状についても見ていきます。

    幼少期からドイツ留学

    1959年、弘前市に生まれた奈良美智は、青森県立弘前高等学校卒業後の1981年に愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻に入学します。同大学大学院修士課程修了後の1988年にドイツに渡り、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学。ミヒャエル・ブーテやA.R.ペンクのクラスで絵画を学びました。

    20代でヨーロッパの名門芸術アカデミーに入学して一流の講師に教わるという経験は、彼がグローバルな美術界で活躍することになるための貴重な一歩だったのではないでしょうか。アカデミー修了後の1994年に同じくドイツのケルンに移り住むと、今では奈良の代表的な作品とされている挑戦的な眼差しを持った子どもの姿を描いた作品を次々と制作しました。例えば「Mumps」(1996年)や「Pancake Kamikaze」(1996年)などです。

    「Mumps」は、本来なら無垢で可愛い盛りのはずの2~3歳くらいの少女が逆三角形の目をして憮然と立ち尽くしています。顔の周りには、おたふくになった時のように包帯のような布を巻いているので「何があったのだろう」と心配になります。「Pancake Kamikaze」は、おもちゃの零戦のようなデザインの飛行機に乗った小さな子が、やはり逆三角形の目をして不敵な笑みを浮かべています。

    ケルンに滞在したこの6年間に日本やヨーロッパでの個展の機会が増え、しだいにその活動に注目が集まるようになったとのことです。1995年にはカリフォルニアの現代美術ギャラリー「BLUM & POE」で初個展を開き、同年から同ギャラリー所属アーティストとして国際的に発表する機会を得たことは、その後徐々に世界市場での価値をあげていくのに重要だったのではないかと思われます。
    ※これ意外と良いかなと思ったけどどうでしょうか?※

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    日本へ帰国


    2001年には、国内初の本格的な個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」を横浜美術館にて開催して、この展覧会は国内5カ所を巡回します。

    この個展をきっかけに奈良のファン層はかつてなく広がります。印刷・複製を問わず『図』としてのみ奈良作品を受け取る人の数も増えました。この時期について奈良は、「作品が理解されず、表層しか見ない人が増えてつらかった」、と語っていた(※)そうです。しかしながら、どの会場でも彼の作品は人気絶大で、その年の美術界の話題をさらったというのですから素晴らしい成果です。

    2003年には、クリーブランド現代美術館など米国内5カ所で個展「Nothing Ever Happens」が開催され、2004年には、個展「From the Depth of My Drawer」が原美術館ほか日韓5館を巡回します。

    ますます国内外の知名度を上げて、2010年から翌年にかけて、ニューヨークのアジア・ソサエティ美術館で行われた大規模な個展「Nobody’s Fool」も好評を獲得。同館にて過去最多の入場者数を記録ました。

    同年に奈良は、米文化に貢献した外国出身者をたたえるニューヨーク国際センター賞を受賞。2013年には、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞と飛ぶ鳥を落とす勢い。2018年には拠点とする栃木県那須市に、自身の私設現代アートスペース「N'sYARD」を開設しています。

    奈良美智の代表的な作品

    ここでは代表作として、奈良美智作品の中でオークションにおける落札額のトップ3を記録したものを紹介します。

    落札額歴代3位の「Hot House Doll」

    1995年に描かれたこの作品は、奈良美智の初期の希少作品として2020年の香港フィリップス・オークションに目玉商品として出品され、約14億円で落札されました。

    オークション参加者向けの出品資料を読むと「2011年に出版された『奈良美智 全作品集1984-2010』の表紙になった作品であり、この重要な図録の中でも主要作品としてフィーチャーされている。最初にこの作品がオークションに出品されて個人コレクションになって以来12年ぶりの再登場である」と鳴り物入りだったことがわかります。

    出品時に、フィリップス香港の20世紀現代美術部門の責任者であるイザウレ・ド・ヴィエル・カステルは、「この作品には、不機嫌でいたずら好きな少女の全身像と、作家の特徴である大きく開いたアーモンド型の目が描かれており、幼少期の無邪気さの中にある暗い面への奈良の執着が強調されている」と話し、「今回の作品に描かれている青いベビードールのドレスは、1990年代に散発的に描かれたモチーフであり、彼の作品の中では珍しいものです」とも伝えられていたとのこと。
    シャーベットブルーのドレスを着て、一見かわいらしい女の子かと思いきや、アーモンド型の大きな目は極端に吊り上がり、瞳の位置も左右バラバラで心がザワつきます。そして瞳は緑色。英語で「green-eyed」というと「嫉妬深い」という意味があるため、何かに嫉妬しているのかもしれません。口も一文字に結ばれていることから、不機嫌そうに見えるのですね。

    パッと見シンプルで分かりやすい気がするのに、よく見てみると次々と発見があり複雑な感情が読み取れたり、共感するポイントがあったりします。また、ホワイトパール色を背景に、目も覚めるようなブルーが目に心地良く魅力的です。「少女」という奈良作品のシンボリックなイメージが描かれていると同時に、希少であることが価値を上げていると考えられます。

    落札額歴代2位の「Missing in Action」

    2000年に描かれたこの作品は、2021年にフィリップスが北京のポリーインターナショナルオークションと共同で開催したオークションで注目作品として出品されました。

    制作年の2000年は奈良美智がドイツから帰国した年であり、また、アメリカで初の美術館個展開催した年です。勢いに乗っていた時期に描かれたものだということがわかります。

    「Missing in Action」は、もの言いたげな表情が目を引く少女が描かれた作品。未知の存在や、鑑賞者に対する不信感や嫌悪感をも表現しているようだとも評されています。

    若芽のように初々しい黄緑色のワンピースを着た、いたいけな少女なのに、やはり目がつり上がっていて口をきゅっと一文字に結んでいます。少し目がうるうるしているようにも見えて、こんなに小さいのにすでに誰かに裏切られたような経験をしているのでしょうか。そう考えると同情の念や、守ってあげたい気持ちが沸いてきます。

    灰色の背景に、ワンピースの若芽色と髪の毛の茶色が絶妙に共鳴する色彩が魅力的です。その上、奈良美智のキャンバスに描かれた作品のなかでも、オークションに出品されることのない希少な作品であったため、約15億円で落札されました。

    落札額歴代1位の「Knife Behind Back」

    「Missing in Action」と同じく2000年に描かれた「Knife Behind Back」は、2019年のサザビーズが香港で開催したオークションにて約27億円で落札され、日本人アーティストとしてはオークションにおける過去最高額を記録しました。「タイトルにナイフの存在が記述されているが、キャンバスには描かれていないため、より威嚇的に感じられる。ナイフの脅威を意図的に隠すことで、限りなく不吉なものとなり、子どもたちの予期せぬ反乱力と過激性が感じられる」作品です。

    「12年間のドイツ留学から帰国した2000年という分岐点の年に制作されたもので、この時期最も特徴的なのは、1990年代に描かれていたナイフ、チェーンソー、ピストル、クラブなどの武器が描かれなくなった」というのは興味深い変化です。
    だからといって少女の表情が柔らかくなったわけではなく、やはり目はつり上がっていて瞳は緑色。口は一文字どころか、ヘの字になっているので、さらに機嫌が悪いのでしょうか。後ろにナイフを隠し持っているというのですから、不機嫌どころか殺気を帯びているとも言えるのかもしれません。

    そしてまたこの作品が、234×208cmという巨大なサイズなので、自分より大きいくらいのこの少女目の前にしたら、かなりの気迫を感じるのではないでしょうか。

    奈良美智のグッズ

    このように、一点ものの原画は世界の美術市場で、億単位で取引されている奈良美智の作品ですが、実はメインのモチーフを元にしたグッズのバリエーションも豊富です。

    少女や犬のモチーフが、 文房具、キッチン用品、カード、ポスター、ファッションの中にポップに展開されていますので、日常生活で奈良美智のアートを楽しめるのが魅力。

    ここではグッズをいくつかご紹介します。

    ポスター(手旗信号少女)

    現代アートグッズのオンラインストアラムフロムの奈良美智ポスターでロングセラーなのが、手旗信号少女です。オリジナルの作品は、1996年に制作されていて、大きなアーモンド型の目をしたおかっぱ頭の少女が、手旗信号を送っています。くまのぬいぐるみを踏み台にしているところが、やはりかわいいだけではない少女の一端を絶妙に表現していて奈良テイストを感じます。ポスター全体のサイズも高さ:30cm/横幅:24cmと小ぶりで、 ¥2,200(税込)というお手頃価格も魅力。

    Pup King

    奈良美智の作品によく登場する「犬」をモチーフにした大人気のぬいぐるみです。
    胴が長い犬はふかふかで、王冠をかぶっているのですが、目を閉じて、幸せな寝顔のようなお顔がなんともいえずかわいい。販売店のラムフロムによると、大人も子どももメロメロになってしまう人が続出とのこと。Sサイズ Mサイズ Lサイズとサイズ3種類あるのも嬉しいポイントです。

    Tシャツ(TIKI TIKI BAMBooooS)

    2005年の横浜トリエンナーレで発表された奈良美智作品をモチーフにしたTシャツです。発売以来、ラムフロムのロングセラーとなっているとのこと。 大きく見開いた万華鏡のような瞳が印象的な少女がクローズアップされていてダイナミック。 ドイツを拠点に活動しているサーフロックバンド「TIKI TIKI BAMBooooS(チキチキ・バンブース)」のミニアルバム『cloudy,later fine』のジャケットにも採用されているとのことですので、ロックファンの皆さんにもおすすめです。¥6,380(税込)。

    奈良美智のグッズが買える場所

    ▼N'sYARD
    奈良美智が気に入ったという、那須の自然豊かな環境の中、2018年にオープンした場所です。作品をより身近に見てもらえる場所を国内に設けたいという奈良美智の思いからオープンした、私設の現代アートスペースであり、カフェと、オリジナルグッズを販売するショップを併設。奈良美智を中心とする現代美術家の作品のほか、彼が長年大切に収集してきたレコードジャケットやオブジェも展示しているとのことですので、奈良美智ファンであれば一度は訪れてみたいですね。
    ▼青森県立美術館
    強烈な個性によって創造の最前線を切り拓いてきた青森県のアーティストたちの心を未来につなぎ、既成の価値観を超えた多様性豊かな芸術を発見・保全・創造するための美術館です。
    同県弘前市出身の奈良美智作品の収蔵は、1998年から始め、現在その数は170点を超えていて、コレクション展では、展示替を行いつつ常時奈良美智の作品を展示しています。
    このような美術館ですので、奈良美智のミュージアムグッズも豊富。人気の巨大彫刻「あおもり犬」をモチーフにしたグッズも見逃せません。

    投資対象としての奈良美智作品

    さてこのような奈良美智作品ですが、投資対象としてはどのような流れの中にあるのでしょうか?

    奈良美智の作品は高額で取引される

    日本国内で現代アートを販売するのECサイトtagboat(タグボート)では下記のように評価されていて、高額で取引されている様子がうかがえます。
    奈良美智の作品のオークションハウスでの評価は、2015年11月クリスティーズNYで341万3千ドルで落札(約4億円)するなど、絶好調である。
    ここ5年で価格は2~3倍近くになっている。
    90年代に数万円で取引されていたドローイングも今であれば200万円を下ることはない。
    今後もこの傾向は続きそうだ。
    値上がり率は以前は草間彌生であったが、2015年以降は完全に奈良美智が大きなトレンドのリーダーとなってきている。
    将来的な価値の上昇はさらに拍車がかかる可能性があり、コレクターとしては今のうちに絶対に持っておきたい一品である。
    また、アートと投資/NFTに関する情報サイトp-art-onlineによると
    2019年には自身のオークションレコードを更新しており、Artprice社発表の作家ランキングも6年連続で100位以内にランクインしており、国内外での根強い人気がうかがえます
    近現代美術の百科事典のArtpediaでは
    2019年10月のサザビーズで記録的な2500万ドルの落札があった奈良美智の作品は、パンデミック以後もコレクターを魅了し続けている。奈良の作品は過去4年間一貫してプラットフォーム上での需要を高めており、Artsyで彼の作品への問い合わせ数は、2018年から2019年の間に63%急増している。
    と、いずれも高く評されています。

    低価格で入手することができない

    QUICKの金融情報プラットフォームのQuick Money Worldによると、
    奈良の代表的な少女のモチーフ作品は、オリジナルのドローイングであればオークション市場では数百万~1000万円を超している。その中で版画作品は2015年以前は100万円を切る価格で比較的入手しやすかった。ところが、指標グラフを見てわかるように、ここ3年で200万円を超す落札価格まで上昇している。

    今回出品されたシルクスクリーン「Star Island」の時価指数の中央値を見ても毎年およそ2割以上の上昇率で、落札価格はここ6年で3~4倍以上になっている。また近年はアジアのマーケットでも人気が高まっているとみられ、その価格上昇率においては草間彌生の作品をも凌ぐ勢いである。この上昇トレンドはまだ収まる気配が見えず、今後どこまで続くのか注視していきたい
    と書かれています。

    まとめ

    長きにわたって世界市場で取引されている奈良美智の作品。一点ものの原画は、すでにかなりの高値をつけているものの、作家はまだ60代で意欲的に新作も発表しているので、作風が変わる前の希少な人気作品はこれから高値をつける可能性があるでしょう。版画作品は、比較的入手しやすい価格でありながら、上昇トレンドも見られるので注目です。
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