会田誠(Makoto Aida)|経歴や作品性について

    2023.01.26

    現代美術家の会田誠は、時に社会に鋭く切り込み、先鋭的な作風や発言から波紋を呼ぶことも多い作家です。しかし、これまでの作家人生と作品を丁寧に知っていくことで、作品を通して見る"日本"や"世界"が少し変わった印象になるかもしれません。この記事では、会田誠のこれまでの経歴や代表的な作品の数々についてご紹介します。

    画像引用:ミヅマアートギャラリー( https://mizuma-art.co.jp/artists/aida-makoto/

    会田誠の経歴と人生

    2012年に森美術館で、2014年にはフランス・ナントのブルターニュ公爵城や、鹿児島県の霧島アートの森で個展を開催したほか、横浜トリエンナーレなどの国際展でも作品を発表している会田誠。まずはそのキャリアを振り返ります。

    誕生~青年期

    会田誠は、1965年10月4日新潟県生まれ。幼い頃はいわゆるADHD(注意欠陥・多動性障害)気質のところがあり、落ち着きがなく、じっとしていられないような子どもだったそう。高校時代は、新潟県内の進学校へ進むも、文化的不良みたいな学生だった、とのちに語っています。

    文化に関わって作り手になりたい、と考えていたものの、美術家を目指してはいませんでした。

    東京藝術大学・大学院へ進学

    会田誠は一浪の後、東京藝術大学美術学部油画専攻へ進学しますが、当時は「まずは地方都市である新潟から出たかった、とにかく美術大学に行けばその先の選択肢の自由度が広がると思っていた」と語っています。

    その後、徐々に大学院への進学を考えるようになり、1989年に同大学院美術研究科へ進学。油画技法・材料研究室に所属し、1991年に修了しました。

    多ジャンルの芸術家として活躍

    大学院修了の2年後である1993年、会田誠はレントゲン藝術研究所で開催された展覧会『fo(u)rtunes』展で作家デビューします。

    レントゲン藝術研究所は、かつて東京都大田区にあったオルタナティブスペースで、1991~95年の約5年に渡り、会田誠と同級生の小沢剛や、ヤノベケンジ、村上隆など、当時若手の現代美術作家たちが企画展を行っていました。

    その後もさまざまな手法やメディアで作品を発表し続け、現在に至ります。

    会田誠の作品性

    会田誠は、絵画、彫刻、写真、映像、そして文筆と、非常に多彩かつジャンルレスに作品を発表しています。テーマにしているのも、美少女、戦争画、サラリーマンなど、自由自在です。

    エロティックでグロテスクな描写も多く、鑑賞者へ強烈なインパクトを与え、その活動は話題となり、波紋を呼ぶことも多い作家と言えます。

    会田誠の代表作品

    ここからは、約30年にわたる作家活動で発表した数々の作品の中から、特に注目すべき作品についてご紹介します。

    1989年「犬」

    会田誠『犬(雪月花のうち“月”)』1996年 岩顔料、アクリル絵具、和紙、パネル 100×90 cm 高橋コレクション蔵、東京 Courtesy: Mizuma Art Gallery

    会田誠『犬(雪月花のうち“月”)』1996年 岩顔料、アクリル絵具、和紙、パネル 100×90 cm 高橋コレクション蔵、東京 Courtesy: Mizuma Art Gallery

    引用元: 会田誠が語る「アート」の未来 | CINRA

    現在までに6作品が発表されている「犬」シリーズ。その第一作目は、1989年、会田誠が大学院に進学した23歳の頃に描かれています。

    2012年に森美術館で開催された個展をはじめ、公的な場で展示する度に撤去するよう抗議を受けたり、テーマへの議論が巻き起こったりすることの多い作品ですが、2022年7月、会田誠自らその制作意図を明らかにした著書『性と芸術』が刊行されました。

    1991年「あぜ道」

    あぜ道 [1991年] 岩絵具、アクリル、和紙 73.0×52.0cm © AIDA Makoto, Courtesy Mizuma Art Gallery

    あぜ道 [1991年] 岩絵具、アクリル、和紙 73.0×52.0cm © AIDA Makoto, Courtesy Mizuma Art Gallery

    引用元: Toyota Municipal Museum of Art 豊田市美術館

    セーラー服を着たツインテールの少女。その後頭部の髪の毛の分け目と、田園風景のあぜ道がきれいにつながったように見える絵画作品です。

    中学や高校の美術の教科書にも掲載されていて、会田誠の初期の代表作と言えるでしょう。どこかユーモラスでありながら、風景や髪の毛などの写実性には驚かされます。和紙に岩絵具とアクリル絵具で描かれたこの作品は、戦後を代表する画家・東山魁夷の名作「道」(1950年)へのオマージュとされています。

    1995年「美しい旗」

    炎があがる荒廃した地で、負傷したセーラー服の少女が日本の国旗を、韓国の伝統的な衣装であるチマチョゴリの少女が韓国の国旗を掲げる、ほぼ等身大の二曲一双の屏風作品。

    太平洋戦争の最中、多くの画家によって描かれた戦争画をテーマに、現在も制作が続く『戦争画RETURNS』シリーズの一つです。

    2001年「食用人造少女・美味ちゃん」

    あぜ道 [1991年] 岩絵具、アクリル、和紙 73.0×52.0cm © AIDA Makoto, Courtesy Mizuma Art Gallery

    引用元: Makoto Aida

    2001年当時、表参道にあったNADiffのギャラリーで、描き下ろし作品として展示・公開されたシリーズ作品。

    食糧危機に直面した未来で、バイオテクノロジーを駆使し、大腸菌のDNAから開発した人工生命の食料化に成功した、というストーリーと、料理された少女たちの衝撃的なビジュアルが大きな波紋を呼びました。

    2012年「考えない人」

    会田誠のプロフィール写真にも登場している、オリジナルのキャラクター"おにぎり仮面"が、肘をついて物憂げに何かを考えているようなポーズをとっています。

    アンバランスでユーモラスな立体作品ですが、タイトル「考えない人」とは何を示唆しているのでしょうか。思わずオーギュスト・ロダン作「考える人」(1902年)を連想する人もいるかもしれませんが、無関係ではなさそうです。

    会田誠が過去に開催した個展

    コマーシャルギャラリーを中心に、美術館や国際的なアートイベント等でもコンスタントに展示を行ってきた会田誠。ここで特に話題と波紋を呼んだ個展の一部をご紹介します。

    2001年・NADiff「食用人造少女・美味ちゃん」

    2001年7月20日(金)から 9月9日(日)の会期で、2001年当時、表参道にあったNADiffのギャラリースペースで開催された個展です。

    前述した通り、描き下ろしの「食用人造少女・美味ちゃん」シリーズが展示・公開されたほか、現代美術家で写真家の松蔭浩之と会田誠とのギャラリートークも開催されました。

    NADiff「会田誠 食用人造少女・美味(みみ)ちゃん」
    http://www.nadiff.com/archives/2001/mimi.html

    2012年・森美術館「天才でごめんなさい」

    2012年11月17日(土)から2013年3月31日(日)の会期で、東京・六本木ヒルズの森美術館で開催された展覧会です。

    それまでコマーシャルギャラリーを中心に展示活動を行っていた会田誠の作品が、初めて美術館の空間で紹介された個展(当時)でした。新作を含む約100点が展示され、デビュー以来20年以上にわたる会田誠の活動を網羅する内容は、大きな話題を呼びました。

    2021年・ミヅマアートギャラリー「愛国が止まらない」(TOKYO)

    2021年7月7日(水)から8月28日(土)の会期で、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催された個展です。

    当初は2020年夏の東京オリンピックの開催に合わせて企画・開催が予定されていたものの、オリンピックの延期に伴って1年延期されての開催でした。

    2019年から続く「MONUMENT FOR NOTHING」シリーズの5作目、「MONUMENT FOR NOTHING V〜にほんのまつり〜」や、油絵具で描かれた新作の写生画「梅干し」など、食にまつわる3作品が展示されました。

    MIZUMA ART FALLERY「会田誠展「愛国が止まらない」(TOKYO)」
    https://mizuma-art.co.jp/exhibitions/2107_aidamakoto/

    会田誠の作品価値

    会田誠の作品は、美術館よりも個人のコレクターが数多く所蔵しているのが特徴と言えるでしょう。

    ここではほんの一部ですが、過去のセカンダリーマーケットで取引された、会田誠の作品についてご紹介します。

    1995年「Drawing for MILK」

    会田誠の初期の作品である「Drawing for MILK」は、セーラー服でツインテールの少女が、紙にインクで描かれている素描です。

    35.3 × 25.5 cmと比較的小ぶりなサイズですが、2018年10月、国内におけるセカンダリーマーケットで有名なオークションハウス・SBIアートオークションでは、落札予想価格15~25万円に対し、80万5,000円で落札されました。

    2003年「?鬼 (「みんなといっしょ」シリーズより)」

    150 × 110cmの模造紙に、油性マーカーと水彩で描かれた作品です。
    2021年10月に開催されたSBIアートオークションでは、30~50万円の落札予想価格がつけられていました。2007年にはミヅマアートギャラリーが、この作品を元に多色刷りオフセット印刷された作品を数量限定で販売し、度々セカンダリーマーケットで取引されています。

    2011年「西洋人は責任とって全員切腹しろ!!」

    会田誠らしい強烈なタイトルと、F150号(227.3 × 181.8 × 3.5 cm)という大型の画面からはみ出そうな勢いを持つ作品は、カンヴァスにアクリル絵具で描かれています。

    2018年10月に開催されたSBIアートオークションでは、落札予想価格200~300万円に対し、414万円で落札されました。

    2012年「あぜ道」

    中学や高校の美術の教科書にも掲載されている、会田誠の初期の代表作である「あぜ道」。

    和紙に岩絵具とアクリル絵具で描かれた1991年の作品は、豊田市美術館の所蔵ですが、こちらは、サインとエディションナンバー入りで、2012年に販売されたデジタルプリントの作品です。

    2021年1月に開催されたSBIアートオークションでは、落札予想価格10~15万円に対し、27万6,000円で落札されました。

    まとめ

    会田誠は、作品を通して扱うテーマと描かれるモチーフに強烈な個性を持った作家です。それ故に賛否や評価が非常にはっきり分かれる作家と言えるでしょう。

    しかしその作品の背景には、日本の歴史、政治、経済、社会情勢、世界の動向などを、私たちが時に先入観や勝手なイメージ、都合の悪さから、"きちんと考えたり見ようとしたりしていない"ことを示唆するような、ハッとさせられるメッセージがひそんでいます。

    現実と照らし合わせてそれを読み解き、考えることもまた、現代アートの醍醐味と言えるでしょう。
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