アーティスト・長場雄(Yu Nagaba)|経歴や作品、コラボグッズ
いま、あらゆる雑誌・Webマガジンの挿絵、書籍の装丁画などで作品が取り上げられているアーティスト・長場雄。彼の名前を知らなくても、その作品は見たことあるという方は多いことでしょう。非常にミニマルでありながら、チャーミングでかわいらしさを感じる彼の作品は、デザインだけでなくアートオークションの市場でも注目度が高まっています。この記事ではそんな長場雄の作品の特徴について紹介していきます。
画像引用:Yu Nagaba公式HP( https://nagaba.com/the-last-supper )
長場雄の経歴と人生
幼少期はトルコで生活し、帰国後に東京造形大学デザイン学科に入学
長場雄は1976年に東京で生まれました。子どもの頃から絵を描くのが好きだったそうです。10歳のとき、父親の仕事の都合でトルコに引っ越します。トルコでアーティストとして活動する女性の先生からデッサンや模写などの技術を教わりながら、クリエイターとしてのスキルを磨きました。
まだ英語が分からない時期だったので辞書を片手にコミュニケーションをとっていたことを長場雄自身が回想しています。
また「最初はお題がなく自由に絵を描くことが苦手で、描くことが嫌になってしまった」と語っており、日本に戻ってからもしばらく絵から離れていた時期があったのだそうです。
長場雄は帰国後、東京造形大学デザイン学科に入学します。しかし明確な将来のビジョンはまだなく、デザイン業界という忙しいイメージが苦手で就職する気になれなかったのだそうです。
アパレル企業「graniph」に勤務
2002年に卒業後、アパレル会社の「graniph」にアルバイトとして入社し、デザイナーとしての活動を始めます。
今ではチェーン店として拡大しているgraniphですが当時はまだ小さく、社長と気軽にディスカッションできる環境だったのだそうです。
そこで「グラフィックデザインをさせてほしい」とお願いをしたら、すんなりと通った。これが長場雄のキャリアのスタートになりました。
それまで長場雄が作ってきたものはファインアート寄りでしたが、graniphのデザインをするからには「売れるもの」をつくらなければいけない。
そこで、"売れるもの"と"自分の好きなもの"の間を探って、よりいいものを作ろうと考えたことが、今につながっている、と長場雄は回想しています。
創作活動を始め、独立
graniphで商業デザイナーとして活動する傍ら、長場雄は自身での創作活動も進めています。自身の活動については、極力、線を少なくしたシンプルな画風が特徴です。最初は有名人や既存の映画などをモチーフに、線を少なくしたイラストを発表しはじめました。
この作風の背景には奥さまの意見があったのだそうです。ギャラリーでの発表の前に奥さまから「面白くない」とはっきり告げられたことで、作品を作り直したのだといいます。この作風がだんだんと認知を得るようになっていき、長場雄は独立を決心します。
現在では、本当に「書店で見ないことがない」というほどに活動の場を広げており、そのどんな媒体にもフィットするシンプルなデザインで活躍の場を広げています。
2022年のいま、日本で最も活躍しているアーティストの1人です。
長場雄の魅力
KAERU PRO LLC All Rights Reserved
引用元:
Yu Nagaba - The Last Supper
長場雄の作品の魅力は、なんといっても「シンプルさ」にあります。もともとグラフィックの世界は「引き算」だとよくいわれますが、長場雄の作品はその極地だといってもいいでしょう。
写実的に描くのではなく、1本の線でミニマルにすることで、逆にその対象の形が明確に見えてくるような感覚があります。
そのうえで、これだけ世間に馴染めている背景には「可愛らしさ」という面も重要です。お洒落で可愛らしい雰囲気があり、ふっと力の抜けるような落ち着ける作風が魅力です。
長場雄の主な個展
2019年「Express More with Less」
2019年の5月1日~5月17日まで、東京都・原宿のGALLERY TARGETで「Express More with Less」が開催されました。個展タイトルを和訳すると「少ない情報でより豊かな表現をする」となります。まさに長場雄の作風を的確に表した言葉です。
長場雄は普段、ACE HOTELのメモ帳に描くことで知られていますが、この個展ではキャンバスに描かれた作品を展示しました。メモ帳と違って、キャンバスは何百年と残るもの。そこに支持体として"アート"と"イラスト"の境目があります。長場雄自身、キャンバスに描くことで特に力が入っていたと語っています。
さらに2020年には渋谷・ミヤシタパークのギャラリー「SAI」で、個展「The Last Supper」を開催しました。このときには横4mもの巨大なキャンバス作品を発表しています。
YU NAGABA SOLO EXHIBITION「A PIECE OF PAPER」
2022年12月9日~12月25日の会期で、長場雄が渋谷パルコでは5年ぶりとなる個展『YU NAGABA SOLO EXHIBITION「A PIECE OF PAPER」』を開催。
展覧会名は、”作品が「1枚の紙」から始まる”という意味から名づけられました。この展覧会では長場雄が「現在の自分を形成するのに大きな影響を与えた」というアイコンを描きおろしたキャンバス作品、過去最大規模となる立体作品などが展示されているのが特徴です。
長場雄のコラボグッズ
長場雄作品は、挿絵や装丁画だけでなく、コラボグッズにもなっています。
ユニクロ
2021年初のUTとして、スヌーピーで有名なPEANUTSとのコラボグッズを発表しました。PEANUTS自体がもともと、非常にシンプルな線画ではありますが、それでも「長場雄の作品だ」と一発で気づけるのが非常に優れたアーティストである証拠だといえるでしょう。飄々な生き方で知られるスヌーピーが、さらに軽やかに見えます。
Tシャツやスウェット、パーカーなどのアパレルグッズだけでなく、折り畳み傘、ポーチ、豆皿など、さまざまグッズが展開されています。
ポケモンカード
昨今、盛り上がりを見せているポケモンカードでも長場雄デザインのものがあります。通常バージョンと違い、モノトーンでデザインされており、ピカチュウをはじめとするポケモンが少ない線画で表現されています。
24時間テレビチャリTシャツ
2022年の24時間テレビチャリTシャツデザインを担当しました。24時間テレビのTシャツは、毎年、旬のアーティストやクリエイターが採用されますが、2022年は長場雄。まさに日本を代表するアーティストの偉業です。
テーマである「会いたい!」を体現する23人の人が描かれています。袖を通すことで「24」人目になるという、遊び心のある作品です。
長場雄の作品価値
長場雄作品は企業依頼だけでなく、個展などで個人が購入することも可能です。現在どれほどの価値があるのかを見ていきましょう。
E.T. (E.T. and Gertie)
長場雄の得意分野である、映画のワンシーンをモチーフにした作品です。映画「E.T.」のガーティが E.T. にキスをするシーンを描いています。E.T.という独自性が高いキャラクターのシンプル化に成功している点が素晴らしく高く評価できます。シンプル化が難しいキャラクターではありますが、どこか愛らしい雰囲気の一枚に再構築しています。
この作品は2020年10月、SBIオークションに出品され138万円で落札されました。これは予想価格の倍以上です。
Gordie & Ace
「Gordie & Ace」も映画のワンシーンです。「スタンド・バイ・ミー」のキャラクターであるゴーディとエースが描かれています。原作は青春映画として知られる名作です。長場雄が描くと、切迫した表情であってもなんだか可愛らしく見えてきます。
この作品は2021年9月、SBIオークションに出品され、23cm×39cmと小さなサイズですが、17万2,500円で落札されました。
Mathilda
この作品も同じく映画をモチーフにしたキャンバス作品です。「LEON」でナタリー・ポートマンが演じたヒロイン、マチルダを描いています。主人公のレオンが買ってきたコーンフレークをキッチンで食べようとしているシーンですが、2人の不思議な関係を長場雄が見事に表現しているのが特徴です。
この作品は2022年7月、SBIオークションに出品され、予想落札価格の倍以上の218万5,000円で落札されました。
まとめ
今回は日本を代表するアーティスト・長場雄さんの経歴や作品について紹介しました。非常にシンプルな線画で構築された彼の作品は、ファンも多く、今後も書店などで目にすることがあると思います。
また個展なども今後開催されると予想されますので、彼の作品が気になった方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。オークションでも作品を購入することが可能です。
参照:
■HIGHSNOBIETY
https://highsnobiety.jp/p/yunagaba-beyondcocid19/
■Yu Nagaba公式HP
https://nagaba.com/about